私の上で喘ぐ娘は、一体誰なのか思考する。娘の顔を見つめ、記憶の糸を解いてみる。嗚呼、ほんの数分前の記憶にさえ辿り着けない。思い出せない。この娘は誰、何故私の上に跨っている。無造作に放られたカプセルは何。私に巻きつくシーツは何。この天井は誰のもの。知らない場所で、知らない娘と。この状況は誰が作り上げたもの。そんなことを考える間に、私は果てた。つく溜め息はアルコールの匂いで満たされていた。

行為が終わり、娘はなにかを言った。そして、私の財布から一万円札を数枚持っていく。それで少しだけ今の状況は把握出来た。推測だが、おそらく酔った私はこの娘を買ったんだろう。値段は知らないが、きっとそれなりの金額で。くだらない行為のために。そんな思考をしている間に、娘はそそくさと扉の向こうに消えていった。この娘にとって行為は、商売でしかないんだろうか。別に不細工ってわけでもないのに、これしかなかったんだろうか。まあ、他人の事情に口を挟むつもりはない。きっとあの娘にも何かしら悲劇めいた理由があるんだろう。きっとそうだ。あの娘もまた、三文芝居が出来るヒロインなだけ。

瓶に入ったアルコールを飲み干した。帰り支度を始め、ふと机の上を見ると娘からメモが残してあった。たわいないお世辞と接客、それと連絡先が書いてある。私はそれをぐしゃぐしゃに丸めて、灰皿に捨て、マッチで燃やした。そして私は二本目の煙草に火を付け、ゆっくりと煙を吐いた。その煙のゆらゆらと揺れる様は、あの娘のようで気持ち悪かった。

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