観客の居ない音楽会で、管楽器の音の波間に死体を埋めた。演奏中に指揮者の目を盗んで行った矮小な葬式では、CLASSICに或れない誰かの孤独が燃やされる。真っ青な光を灯して、散り散りに灰に変わって往く森羅万象が、其の熱量はもう此処には亡い事を知らせる。私たちの幼気な僅かな夢を乗せた気球が虚しくも萎んでいく様が、心に引いた防衛線を飛び越えて、感情の渦に罅を揺蕩わせた。
延々と鍵盤の上を這う五本指はどうにも冷たくて、黒鍵に触れた指先が奏でる単三和音が、自殺因子を活性化させる。きっと何かを殺す度に、私は自分を殺してきた。奏する事でしか解れない不器用で、日々肥大化する不気味な感情を必死に抱えなければ、私たちは。最早、生きて、いけなかった。大凡、何処にも。そして、何者にも。だが、奇しくも此れが、背中合わせの後ろ向きの自分に聴かせてやる為の音楽を、必死に探しているようにも見えて、私は自嘲気味に笑う事しか出来なくて、口惜しくて、口惜しくて、殺して欲しかったんだ。

歪んだ街路樹の枯木に自己投影して、私たちはまた何か解った気になって、饒舌に孤独を語る。透けて見える承認欲に吐き気を催しながら、愛の無い愛想笑いを繰り返す。世間と自分のズレなど無い癖に、自己愛。変わり者のふりをして、必死に他者との差別化を計って、上辺だけの個性を身に纏う。得意気に笑う特異気の無い私。人混みに溺れない理由を探す。理屈付ける。有りもしない答に結び付ける。無理矢理。
感情を丁寧に包装しなければ、自分など醜くて許せそうにないから。人様に魅せれる物など私には何も無いから。可哀想な自分を演出し続ければ、誰かと向き合う事から逃げても許されるようで、孤独と云う免罪符を持てば、目線の低さが露呈せずに済んだ。其れしか知らなかった。不明瞭な世間で。高層ビル群を見上げて、掌を太陽に透かしてみたけど、其処に、血潮は流れていないような。冷たい指先がまた、マイナーコードに触れる。ちっぽけな孤独は、消化不良のまま外へ排出されていった。

確実に、私はワタシの此の全てを誰かに許して欲しい。心の平穏を求めて、自分に都合の良い情報だけを掻き集める。ただ明日が怖くて、曇った窓硝子を祈る様に必死に拭く。少しでも明瞭な世界が見たくて必死に。怖い。時計の針が私を指す度に、どうしようもなく怖い。
生きるだけで精一杯なのに、また其れ以上を求めて、藻掻く程に沈んでいく泥沼の中で、空に太陽が昇って往くのを見た。もう此処には日々光も差すこと止め、影は形を失い闇に溶けて往く。其れが唯一の世間との薄い繋がりで、自己の形が記憶からボトボトと落ちていき、寂しさと自尊心だけが私の中に残る。この世界の全てを愛しみ、嫌悪し、天秤が揺れる。だが、いくら考えたところでどちらかに傾ける筈も無く、中途半端な自己で二つを内包した。
きっと遠い何処かでまた、終われない音楽会が開かれる。溢れた孤独は五線譜の海に流され、遠い何処かで、また音楽に変わる。掃き溜めにも見える最果ての、こちら側で。

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