この町には看板や標識が多過ぎて、処理しきれない情報量に忙しくなっちゃって、大事なものを見落としてきた気がします。おまけにティッシュ配りは私に手を伸ばすから、もう頭の中は歩を進めることが精一杯で、風のせせらぎも届かくて、紅葉する山の景色を眺めるのも忘れて。ヘッドフォンをしてお気に入りの音楽を楽しむのも素敵なのかもしれないけど、今は五感でめいいっぱいこの町を感じたかった。「こんにちは。」って挨拶をして、爽やかな気持ちで目的もなく歩きたかった。

学生の頃、ライブハウスで隣にレースをあしらった可愛い服を着た女の人が、退屈そうに俯いて立っていたのを見ました。その仕草がお人形さんみたいで見とれていたら、いつの間にかライブが終わっていて、耳の中に音楽は残らないまま。後日、そのお姉さんとmixiで知り合って同じ学校の先輩だと知りました。いくつかメッセージのやり取りをして、その後に学校のラウンジで改めて顔を合わせたら、はにかみながら挨拶をしてくれて、そのぜんぶの仕草がやっぱり、とても、きれいで、触れてはいけないものに触れてしまった気がして、壊してしまいそうな気がして、私は困って笑った。その空間は刹那的で、そして永劫に続くガラスの部屋。

中央線の快速を見送って、次の鈍行に乗った。中野から新宿までの短い間にどんどん気持ちが冷たくなっていくのを感じた。私は新宿が好きです。朝方になると少し嫌な臭いがするのだけれど、いろんな人が忙しそうに行き交うのを見ると、なぜか私も進める気になれるから。たとえばあの女の子は上京してきて、今はナンバーワンのキャバ嬢なんだって。あんまり仲良くないからFacebookで知ったんだけどね。みんな上京して同じような面子で集まって遊んでる。遊ぶ場所が変わっただけで、やることも、何も変わってない。ねぇ、街灯に集まる虫と、私と、みんなも、何が違うのかな。大人になるっていうのがそういうことなら、別になりたくなかったかな、なんて。

43℃くらいかな。湯船の中で今日あったことをひとつひとつ思い出しながら、ぼーっとするの。毛先が湯船のに漂って、ぽちゃりぽたりと、水の垂れる音がする。子どもの頃はあんまり長い時間浸かってられなかったんだけど、最近は気付けば1時間以上浸かってることもあるかな。なにをしてるわけではないんだけど。そういう時間。

お風呂に入ると眠くなります。1日が終わりを感じて、スイッチが完全にoffになっていて、もうなんにする気がしません。だから、もう寝るね。もう会うこともないと思うけど、一応、またね、って挨拶をしましょう。うん。じゃあ、またね。おやすみなさい。

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