耐えきれなくなって口の端からこぼれた言葉を、やさしくすくってあげられる人になりたかった。うずくまって泣いているだけで、そんな風になれると思っていたの。本当は私にもそんな才能があって、今はほんの少し眠っているだけなんだって。いつか誰かが揺り起こしてくれて、自分のやさしさに触れるだろうって。そんな風に今に甘えて、うずくまったまま歳だけを重ねた。簡単に、呆気なく、いつの間にか、当たり前に、大人になってしまった。こんなはずじゃなかったんだよ。ねぇ。君の口からこぼれてる言葉を、ただ見てるだけで。きらきらと光って、フローリングで弾ける言葉を、私はただ見てるだけ。

フローリングが冷たいなんてこと、別に知りたくなかった。けど、また私は馬鹿みたいに座り込んで、膝を抱えてうずくまって、煙みたいに立ち昇る感情で、どんどんなんにも見えなくなる。自分。じぶん。じぶん。やさしいじぶん。蜃気楼が私の前に現れては、触れることなく消えていく。本当は、泣きながら走っていったあの子のこと、追いかけなきゃいけないの知ってたんじゃないの。どうだろう。もくもくと充満する真っ黒な煙で、見えないよ。自分も、それ以外も、もうなんにも、見えない。

たぶん、きっと、もしかしたら、私だけがこんなふうに情けないんじゃないんだ。だれもかれもきっと、たぶん、情けない。だからいいじゃん。私も、情けなくって。私だけが悪いんじゃないんだよ。たぶん。きっと。ふわふわと、みんながみんなわるい。わるい。だからいいじゃん。なにが。なんでも。なんでもいいじゃん。たぶん。もしかしたら、私だけが悪いのかもしれないけど、私だけが情けなくて、やさしさを育むことを忘れてしまって、いつまでもバリアをはっているの、かも。しれないけど。わたしは、わるい。のかな。きっと。たぶん。ねぇ、

矛盾が私の中で反復して、どんどん大きくなって、ハウリング。甲高い。ぎちぎちになった私の中身が悲鳴をあげてるみたいで、ギターみたいで、慟哭みたいで、こわれてるみたいで、赤ん坊みたいで、つらくて、ぎゅっと自分を抱きしめて、どんなに耳をふさいでもうるさくて、うるさくて、やさしくなりたくて、なれなくて、きらいで、すきで、きらいで、きらいで、でもここにいたいって、いたいって、ここに、あの子の左側に、いたい。

こぼれて、おちて、はじけた気持ちに、手を伸ばす。伸ばして、やさしく。やさしく。口からこぼれる。ぎちぎちになった私の中身が。ぼたり。ぼたり。ぼた。り。

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