中央線止まんな

電車乗ってたら女子高生が大量にいたもんだからびっくりして「キョエーッ!祟りじゃあああ!!」って叫んだら、優先席のほうから老婆がやってきて、ぼくに冷凍みかんを無言で手渡した。
ぼくはそれを受け取って「ツメテェ」とか言いながらも、なんか心はあったくなってた。近頃流行りの ほっこり。

優しさっていいなぁと思って、ぼくは老婆は席を譲った。女子高生がクスクスと笑う。うるせぇ死ねブス。
老婆はニッコリとしてぼくの座っていた場所に座った。心暖まる微笑みだ。女子高生の笑い声は生ゴミだ。死ね。

キキィィィィィ!!!!!!!!

ぼくが脳内で三回女子高生を殺したとき、電車が急ブレーキをかけ、止まった。
「少々停車します。ご迷惑おかけします」 アナウンスが響く。

どうやら人身事故未遂、らしい。
線路に飛び込んだが奇跡的に電車は止まった。なんていう不幸なやつだ。マジに哀れだな…。
ぼくはそんな哀れな自殺志願者の顔を拝もうと降りて線路を覗き込むと、なんとそこにはまーちゃんがいた。
頭を掻きながらだらしなく へへへ と笑ってる。少し欠けてる前歯が惨めさをさらに加速させていた。

「なにしてんの?」

「へへっ、いやぁ、あのぉ…、まぁ、いろいろあって、死んでみようかなって」

「ふーん。いろいろ、ね。例えば?」

まーちゃんは戸惑い「いや、ちょっと、ね」となにかを隠しはぐらかしていた。

「あっそ。話せば場合によっちゃぼくが殺してあげるよ」

「ほんとにっ?」
まーちゃんは急にいつもの笑顔を浮かべたと思ったら、また暗い表情になり、ゆっくりと喋り出した。

「あのね、こないだうさぎ公園でダラダラしてたら、なんか気持ち悪い高校生がやってきて『まーちゃん超すきすき愛してる』とか言ってきたの
知らない人だったからちょっと怖くてただ無視してたら、やさしさ倶楽部がどうとか、宇宙がどうとか、意味わかんないことをずっと言ってきたの
なんで色々知ってるのかわかんないし、怖くて逃げ出した
そしたら『まーちゃん結婚してよぅ』とか言いながら、追いかけてきて
もう怖くて怖くて走って逃げたよ
だけど追いつかれちゃって、押し倒されたの
『やさしさって、なんだと思う?』って言って、キスをしてきた
上唇を吸うような長い長いキス
すごく嫌がったんだけど、チカラが強くて…
離すとき、きゅちゅぱ、って最低な音がした。もう本当に泣きそうだった
そして『宇宙ってなんだと思う?』って言いながらスカートの中を弄ってきて
最低な気分だったよ
世界なんか終わればいいって思った
ここからは記憶が曖昧だけど、ただひたすらに叫んだ そしたら大嫌いな警察がきて 気持ち悪い高校生を捕まえた
気持ち悪い高校生は 捕まえられて離れていく瞬間も パトカーに乗るときも ずっとずっとニタニタニタニタ気持ち悪い笑みを浮かべてた
もう何もかも終わればいいと思った
だから、死のうと思って…」

「ふーん、つまんない話だね」

「え?」
まーちゃんは驚いたような顔をする。

「携帯小説じゃん。それ。最悪。たかだかレイプされそうになっただけじゃん。最悪。まじつまんねぇ。死ね」

ぼくは老婆に貰った冷凍みかんを思いっきり投げつける。
もう溶けてぐしょぐしょになっていたみかんは、まーちゃんの顔にぶつかり ベシャ と潰れた。

潰れたみかんがキラキラと光る。
みかんの中には、何本も何本も針が入っていた。

老婆の心暖まる微笑みを思い出す。

よく見ると遠く柱の影に老婆がいて、ニタニタしながらこっちを見つめてた。
まーちゃんを涙を流し、世界なんて終わっちゃえばいいんだって叫ぶ。

やさしさってなんだろう。

電車は次の駅へと、発進していった。

1件のコメント

  1. マジ気持ち悪い高校生だね、そんな奴は死刑になって早く死ねばいいのに
    大丈夫、これからは僕がまーちゃんを守るよ、僕はまーちゃんを愛しているから
    一緒に宇宙に逃げよう!!

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