鳥が絞め殺されているかのような酷いさえずりで僕は目を覚まし、くそ暑い夏を迎えるべく窓を開けたが、爽やかなそよ風が部屋を吹き抜けただけだった。
仕方がないので布団をたたみ、爽やかな朝を演出すべく、朝食を作ろうと両開きの冷蔵庫の扉をいつもと逆から開けてみた。
が、中には冷えた空虚しかなく、朝食どころの話ではない。

仕方なく僕はポチ公用のドックフードをバリボリとかじり、24時間つけっぱなしのPCでYouTubeを閲覧する。
そこでネットで薦められた脳髄’sの曲を何曲か聴いたが、なにかのパクリしか聴こえなくてため息が出た。

気分転換にiTunesで上原ひろみのアルバムを流し、何故僕のブログには変な人しか集まらないんだろうと思案してみたが、答えは出なくて、またため息が出てしまった。
するとガタンッと音がしていきなり部屋の扉が乱雑に開き、驚いて視線を向けると、片桐はいりが阿呆踊りをしながら僕に向かってきている。

「阿呆にならにゃ!狂気を詰め込み!孤独が隠し味!ァ、ソレソレ!!」
片桐はいりは僕の部屋に入るやいなや謎の歌を歌っていた。

「命が尽きるにゃ!まだまだ早い!飽和するほど!阿呆になれなきゃ!キチガイ地獄の!浮世でありんす!」

「あの、うるさいんですけど。あとここ僕の家なんで出てってもらっていいですか」
僕は僕の家という単語に妙な気味の悪さを感じながら、出来るだけ冷たくそう言い放った。

片桐はいりは一瞬だけ悲しそうな顔をしたかと思ったが、すぐに真顔になり「ぁ、は、はい…。申し訳ございません…」とだけ言い残して、そそくさと部屋から出て行った。

一体なんだったんだろう。

一気に静かになった部屋に上原ひろみのSummer Rainが響いていたが、カタカタとHDDが音を立て、次の曲に変わり、日本語のHIPHOPになった。
耳を澄まして歌詞を聞き取ってみたが、独特の発音だったため「家に帰りな」という部分しか聞き取れなかった。

僕は小学生のころ突発性難聴にかかっていて、それから左耳が少し悪い。
だから音楽の音量は人より大きめだし、テレビは小さな音量で字幕機能で見ている。
その事が僕を酷く憂鬱な気持ちにさせる。

音楽の音量を上げてるとき、この世に音楽なんてなければいいと思う。
リモコンの字幕ボタンを押してるとき、心に爆発しそうな気持ちを注いでいる。

日に日に目も悪くなっていて0.01しかないし、鼻もきかない。舌も肥えているわけでもないし、左耳は軟骨の一部が腐ってとれてから、痛覚もうすくなった。

僕の五感はにぶい。
そのことに日々ストレス感じながら、スクランブル交差点で人にぶつかったとき、酷く孤独な気持ちになる。
だけど、そんな孤独が嫌いではなかった。
むしろ孤独が好きだ。楽しい。

マジで。

なので僕はそんな孤独と戯れるべく、シンプソンズのキャラクターたちがプリントされたTシャツを着て、街へと繰り出す。

玄関で靴紐を結び、ドアを開けると

片桐はいりがぐったりと項垂れていた。
急に怖くなって勢い良くドアを閉め、鍵も閉めずに飛び出した。

景色が後ろに吹っ飛んでいくほどのスピードで無我夢中で走り、何百メートル走り終えたところで、ゼェゼェと息を切らし、止まった。
冷や汗の混じった汗を拭い、呼吸を整える。

「なんだったんだ、あの片桐はいりは…」
そう呟いて顔をあげると、そこには僕の家があった。

あれ
なんで

さっきの片桐はいりの家じゃん。

また、僕は深いため息を吐き捨て、自分の記憶力の無さにちょっと泣きそうになった。
今度は僕は本当に僕の家に帰り「ただいま!」と元気良く挨拶をしたが、誰もいなくて

机の上にあった腐ったカップラーメンに、コバエがたかっているだけで

ついに僕は泣いた。

This article has 1 comments

  1. りゅー Reply

    雨野さんCD作ったんですけどいります?

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